トコトコ読書雑記

読んだ小説について語ります。たまに映画の感想も

『宝石鳥』感想

創元ファンタジイ新人賞大賞受賞作です。

傑作揃いの創元ファンタジイ新人賞受賞作の中でも、とびきり好きな作品です。

宝石鳥

宝石鳥

 

評価 ★★★★★

 

異世界が舞台とのことですが、ほぼ現実世界に重なるような異世界
国名は違うけど、日本っぽい国が出て来たり。

舞台となるのは、東南アジアをモデルにしたとおぼしき国です。インドネシアかな?

過去と現在が交錯する構成になっており、二段組みの分厚いハードカバーで400ページ近くあるので、「読み切れるのか!?」と心配になりましたが、読み進むにつれて、この作品世界に引き込まれていきました。

 

骨欠け子」などのワードがファンタジー好き心をくすぐります。
これに出てくる神話が非常に個性的で、「どこかにありそうで、ない」ものなんですよね。
こんなのどうやって思いつくんだろう?と不思議に思ったのですが、作者の鴇澤亜妃子さんはインド哲学を勉強されていたようで……。

いわゆる東洋思想。しかも南アジアのものに造詣が深いからこそ、書けた作品なんじゃないかと思いました。

 

恋人を失った音楽家が、どう物語に絡むのかと思ったら……とても意外な形でした。
とはいえ、荘厳な神話的要素に満ちあふれた話が、エンタメ的な展開とオチに落ち着いてしまうので少々物足りなさはありました。
きれいにまとまっているんですけどね。設定・題材が凄すぎて、それ以上を期待してしまいました。

それ以外には視点がかなりめまぐるしく変わるので、読み辛いなどと……細かな不満はあるものの、やはりこれだけのファンタジーはなかなか読めません。

読んだ後は、しばらくボーッとしていました。そのぐらいの熱量を持った、大作です。
ファンタジー好きな人にこそ読んでほしい一作です。